平等

先週、二人の道場生を厳しく叱りました。

AくんとBくんとします。

Aくんは、その日が出席カードのシールが満タンになる日で、稽古前から浮ついていました。
普段から集中力の無さを私からよく注意されています。
その日は一段と集中力が無く、基本稽古はあからさまにダラダラしていました。
組手の稽古では、ほとんどの子が白帯で幼年のキッズクラスなので、攻撃側と受け側を限定したり、使う技や返し技を決めての稽古をしました。
よって、話を聞いていないと何をするのか分かりません。
Aくんは組手稽古の説明も全然聞かず、受け側の時も攻撃したり、受けが上手くできない幼い子と当たった時はバンバン技を打ち込んだりしていました。
当然私から注意されます。
で、稽古後。
本人は待ちに待った板割りですが、私はさせたくありませんでした。
させなかったら良かったと後悔しています。
稽古で身に着けた前屈立ち、手刀打ちと引き手、気合い、そして試し割りに挑む集中力、それらを発表する場です。
しかし、Aくんには浮ついた気持ちしか見られません。
私が一通りの試し割りの説明をしましたが、どこまで聞いているのか?という感じでした。
案の定、前屈立ちでもなく、引き手もなく、気合いもなく、集中力もなく、ただ単に手を勢いよく板に叩きつけただけでした。
試し割りの板ですが、白帯の子が使うものははっきり言って私なら小指一本で割ることができるようなものです。
空手を知らなくても誰でも割れます。

Aくんが板を割った後、色帯の先輩たちが凍り付いていました。
「そんなふざけたことしたら、先生に殴られるぞ…」と。
殴りこそしませんでしたが口頭で注意し、何が悪かったか考えてこい、と言いました。
後ろでいたAくんの母親が、
「お前は悪くない!」と言っているのが聞こえましたが無視しました。

三日後、その母親から電話があり、空手を辞めさす、と。
先生の息子への対応がおかしいので預けられない、と。
「ああそうですか。すぐに辞めて下さい。」と私の返事。

Bくんについて。

先週の稽古時、組手を行いました。
組手といっても、初めての子が多いので初歩のレベルです。
Bくんは相手にビシッと一発蹴られてしまいました。
そこで「キレた」のです。
血相を変えて突っ込んで思いっきり蹴る…
そういう気持ちもある意味で必要なので、
「ケガしたらいかんから、あんまり強くするなよ~」と声をかけつつ静観しました。
(そもそも、最初に強く蹴ったのはBくんではなく対戦相手の子だし。)
ですが、Bくんは私の言葉に耳を貸さず、ガンガン蹴っていきます。
相手の子は困惑していましたが、冷静に最後まで対処していました。
組手終了後、「お互いに礼!」の号令の際、相手の子はきちんと礼をしましたが、Bくんは相手を睨み付けながらそっぽを向きました。
これは絶対に許せません。
厳しく叱りつけ、頭にゲンコツを入れました。
(もちろん、痛いだけでケガをしない程度の強さで。)

その後、Bくんは稽古が終わるまでずっと泣き続けていました。

稽古終了時、全員に対して、

「組手の稽古とケンカの区別ができない子には空手は教えられない。理解できない子はみんなの迷惑になるから道場に来なくてよろしい。」
と言いました。

Bくん、もう来ないかな?と思いましたが、しっかり反省してまた稽古に来てほしいと心底思っていました。

で、今日。

稽古に来てくれました♪
入り口で私の顔を見て、照れくさそうにニコッとして一礼。
「オス、お願いします!」
そう言って道場に入ってきました。
今日も組手の初歩の稽古をしましたが、きちんと礼もできていたし、相手を尊重した稽古ができていました。

同じように私に叱られても、AくんとBくんでは全く結果が違いました。
二人とも幼稚園児や一年生ではありません。
嫌いだから注意しているのではないのです。
その子の今後の成長を考えて「指導」しているのです。

理解できない人もいるのでしょう。

間違った平等意識というものがあるではないでしょうか。

先生と生徒は、人間としては平等でしょうが、「教える者」と「習う者」という明確な立場の違いがあります。
立場まで平等だと思っているから、注意されることに納得がいかないのでしょう。
私の道場は突きや蹴りを教えるだけの場では絶対にありませんし、また、託児所でもありません。
武道修行を通じて、人間力を高める道場です。
もちろん、幼稚園児には幼稚園児の、小学生には小学生の、仕事を持った成人や壮年、女性にはそれぞれに適した指導をします。

先週、厳しい内容の事を書いた日があり、何かあったんですか?と何人かの方に聞かれましたので今日のこの文章を書きました。
世の中には色んな考えを持った人がいると思いますが、当道場の指針をご理解いただいた上でお子さんを預けて頂きたいと思います。