言葉

言葉を喋るのは人間だけなワケです。

その言葉によって、元気が出たりやる気が増したり勇気が沸いたり。

反対に、言葉によってやる気が失せたり深く傷ついたりすることもあります。

一昔前と大きく変わり、少年部の試合がとても盛んになりました。
これにより、少年部の組手技術が大きく向上し、競技人口も増加しました。
親子で稽古する人も増え、親子の絆がより強まったという話も耳にします。

最初に書いておきますが、私は子供の競技空手に反対ではありません。
むしろ大賛成です。
家庭での親子稽古も良いと思います。
試合のセコンドに、お父さんやお母さんが付くのも良いと思います。

ただ、選手に対する「言葉」を考えていただきたいと思います。

野球に例を取りましょう。

ベンチから監督がピッチャーに向かって大声で、

「カーブ投げろ! カーブや! 早よ投げんかい!」

一塁ランナーに向かって怒鳴り散らすように、

「盗塁じゃ! 盗塁せい! 早よ盗塁せんかい!」

絶対言わないですよね。

試合で負けたチームの監督がピッチャーに向かって、

「剛速球投げまくって三振取りまくったら負けんのじゃ!
 なんで剛速球を投げまくらんのじゃい!」

バッターに対して、

「ホームラン打ちまくったら勝てるんじゃ!
 なんでホームランを打ちまくらんのじゃい!」

ありえないですよね☆

その監督さん、絶対に野球をやったこと無いですよね。

ま、そんな監督やコーチは絶対いないんですが。

でも、

空手の場合、

そういう光景が、試合時の体育館の中ではあちこちで見られます。

セコンドは、あくまでもセコンドです。

二番目の人です。
アドバイスをする人です。

マット場で向かい合っている二人にしか分らないこともたくさんあります。

セコンドは、時間の経過を正確にはっきり伝えること、そして選手に勇気を与えることが大きな仕事です。

こういっては何ですが、ヘンな技術アドバイスをされると選手は調子が狂ってしまいます。

「右ローじゃ! 右ローじゃ!! 早よ右ロー出せ!!」

なんで出さないのでしょうか?

相手にもその声は聞こえてるんですね。
右ローに対してのカウンターを準備してるのが分るから蹴らないんですね。

「回って回って!」

回り込みを多用した場合の利点はもちろんありますが、
回り込みを多用することによっての不利益もたくさんあります。
回り込みをしないで済むならしないで戦う方が良いワケです。

でも後ろから、

「早よ蹴れ! 何で攻めんのや! 聞いとんかコラァっ!?」

応援のはずが野次になってます。
しかも、一番信頼している人に野次られるのです。

選手は正常な思考が出来なくなります。
応援(?)のおかげで。

空手の試合時間は短いです。
一瞬の状況判断の連続で試合は構成されます。

落ち着いた精神状態でなければ勝てる試合も勝てません。

応援が一生懸命なのは悪いことではないんです。

ただ、それを言ったことでどうなるのか?
試合中、言わなくていいことは極力言わない。
戦っている本人が状況を一番分っています。

戦っている人に分らないことは、時間の経過と客観的な試合状況です。
それらを、言葉を選んで伝えつつ、勇気付ける言葉を送ってあげる。

それがセコンドです。

自分の思うがままに選手を動かそうとするのは全く違います。

そんなセコンド、はっきり言っていない方が戦いやすいです。

いたら迷惑です。

誰に宛ててというのではありません。

大会前にこのことを書いておけばよかったのですが、気が回らずすいませんでした。

次回の大会時、セコンドにつかれる場合、このことを思い出してくれたら幸いです。