親の愛情と自閉症スペクトラム

夏休みが終わり、2学期が始まりました。
これを読んで下さっている保護者の方のお子さんはいかがでしょうか?
ご存じの方も多いかもしれませんが、
この時期が、10代の自殺が最も多い時期なのです。
幸い、私の道場では自殺者は出たことがありませんが、
毎年神経を使う時期となります・・・
※この時期にお子さんに何かいつもと違う雰囲気を感じたら、
 絶対に放っておかないで下さい。
 早め早めの対応が功を奏します!

      
私は長年空手道場をしていますが、
退会する子が多い時期は年に2回あります。

      
一つが3月です。
4月から新しい生活に変わるという人が出てきます。
進学・就職・転居などにより、
生活リズムが大きく変わるということで、
道場へ稽古に通う事が継続出来ない、と。
この場合の退会は、まさに「卒業」といった感じです。
晴れやかな気持ちで、みんなで送り出してあげることが出来ます♪

      
もう一つは、実はこの時期です。
この時期に退会申請をしてくるお子さんは、
多くがADHDやASDやLDといった症状が見られるという特徴があります。
退会理由は、
「しんどい」
「痛い」
「何のためにやるのか分からない」
※この理由を言う子は家ではずっとゲームをしている子★
「組手が怖い」
「とにかく行きたくない」
「名前が分からない〇帯の子に虐められる」
※調査した結果、実際にそのような事があった例がありません★
 架空のイジメっ子を作っての話です・・・

      

上記のアルファベット表記のものですが、
発達障害と言われる分類であります。
最近では、愛着障害という言われ方もあります。

      

私はこれらのお子さんを差別しません。
個性として受け取り、愛情を注ぐ指導をします。
指導法を少し変えますので、差別はしないけど区別はしているのかもしれません。

      

どのように指導するのかと言いますと、
個性として尊重し、良い方向に向かうよう導いて行きます。

      

愛情表現にも種類がたくさんあります。
愛しているが故に「助ける・褒める・お手伝い」をする。
そして、
愛しているが故に「助けない・厳しく接する・お手伝いをしない」という事もあります。
私は発達障害というワードがあまり好きではないので、
愛着障害の方を普段は使っています。
自閉症スペクトラムという範疇に入るお子さんのほとんどは、
私から見て、「愛情に飢えている」か、
逆に「偏った愛情を与えられすぎている」と見えます。
親から子への愛情表現、見直してみるもの良いかもしれません。

      

閑話休題。

      

愛着障害と見られるお子さんたちですが、
決して能力が低いだけの人間ではないのです。
これを保護者様にはぜひご理解頂きたいです。
愛着障害のお子さんは、親から虐待を受ける子が多いです。
うちの道場にも過去にいました・・・
お父さんが児童虐待で逮捕される所までいきました。
「その親子関係やその対応は良くないですから改めましょう!」と。
何度も話し合いを持ちましたが、
奥様に通報され、
警察に逮捕されて留置所に入るまで分かってもらえませんでした。
出てきてすぐに、私に謝罪するために道場に来ました。
本当に謝らないといけないのは、
幼少期に虐待を受け続けたという消えない記憶を持った、
心に傷を負ったお子さんたちなのですが。

      

ADHDのお子さんは、注意力が散漫に見えるという特徴があります。
また、多動症といわれるように、じっとしておくことが極めて苦手です。
空手でいうと、不動立ちが出来ません。
すぐにどちらかの足に重心を乗せてしまうか、
ひどい場合は、すぐにその場に座り込んでしまいます・・・
口をポカンと開け、斜め上方をいつも見ているという特徴もあります。
三戦立ちや前屈立ちなどは全く出来ませんし、
正座で姿勢を正す事も出来ません。
基本稽古は持って2分です。
凄くだらしない子に見えるのです。
ドラえもんに出てくる、のび太君のような。
「行き渋り」を見せるのも特徴です。
送迎の車から降りないとか、
道場の入り口まで来ているのに入らない、というような。
「出席簿に名前を書き忘れる」「お漏らし」「頻繁に忘れ物をする」というのも特徴です。

      

ASDのお子さんは、コミュニケーション能力がとても低いです。
空手でいうと、挨拶や返事が出来ません。
約束組手やミット練習のような、
相手と阿吽の息を合わせることが必要な稽古は極めて苦手になります。
組手稽古では、自分より弱い相手はめった打ちにして、
強い相手との稽古では逃げ回るか、
抜け殻のようになって無気力でただ相手の前に立っているだけの演技をします。
また、「お母さんが今日は組手をしたらダメって言った」とか、
「両手両足をケガしているので組手は出来ません」というような、
すぐにばれる嘘を平気でつくという特徴もあります。
こちらも、行き渋りや忘れ物が多いという特徴があります。
所謂、可愛げが無いと感じられる子が多いです。
イジメの対象となってしまうか、逆に物凄い非行少年になるケースが見られます。
しかし、中には物凄く勉強が出来る子もいたりします。
正解がきちんと決まっているモノに対しては、抜群の記憶力を発揮したりとか。
ですが、ごく当たり前の人づきあいが全く出来なかったり、
ほんの少しの応用問題は全く対応出来なかったりという性質があったり、と。
実際のところ、最も扱いが難しいです。

      

LDのお子さんは、モノを覚えるという作業が極めて苦手です。
空手でいうと、型が極端に苦手になります。
2~3年来ているのに、太極その1がまだ覚えられない、というような。
組手では、自分が攻めている時は良いけど、
相手のフェイントなどに簡単に引っかかるという特性があり、
試合では優勢に進めているのに、終了間際に技ありを取られるといった、
逆転負けを喫することが多々あります。
バカにされたり、イジメられるという経験を積む子が多いようですので、
空手を続けることで強くなってほしい子たちであります。
感性が豊かな子が多く、
マンツーマンで話をすると、本当に心から純粋で可愛い子が多いです。

      

上記のお子さんに共通するのが、「痛み」に対する感覚です。
柔軟性ですと、
めちゃくちゃ体が柔らかいか、
めちゃくちゃ体が硬いかのどちらかになります。
そして、うちの道場では白帯の頃からやる、「片手拳立て保持」が出来ません。
「痛み」に対する感覚が過敏すぎるのです。
ストレッチと片手拳立て、
その子にとってはナイフで身を削ぎ落される位に痛すぎるのです。

      

そう、「感覚」が普通といわれる人と違うんですね。
当たり前に出来なければならないことが出来ない分、
普通は絶対に出来ないと思われることが出来たりします。
例えば、写真のような絵を描くことが出来たり、
一度聞いた曲をすぐにピアノで演奏出来たりとか。
私の接してきたお子さんですと、
身体能力が物凄く高い子が多かったりします。
なので、組手は平均以上に強くなる子もいますし、
痛みに敏感すぎて、
逆にあり得ないぐらい弱いままで終わる子もいたり・・・

      

「能力に凹凸の差が激しい」のが最大の特徴なんです。

      
凄く劣ったところもあるけど、天才的な部分もあるのです。
うまく才能を生かす事が出来れば幸せな人生を過ごせるかもしれません。
しかし、多くの人が「生き辛さ」を実感して、
登校拒否や引きこもりになってしまうといった問題があります。

      

お子さんの特徴を早期に見抜き、
思春期や社会人になった時に、
社会で働いていけるように、土台(強い心)を作ってあげておくことがとても大切です。

      

私ですが、愛着障害のお子さんは1クラス稽古すれば分かります。
ADHDなのか、ASDなのか、LDなのかとか。
専門家の方に聞いてみますと、初対面でも15秒以内に分かるそうです。
特徴的な目つき、表情、行動パターンがあり、
母親との接し方を見たら100%確証が持てるのだとか。

      

私はマンツーマンで接する訳ではないので、そこまで早く確証を持つことは出来ませんが。
私が判断する際に参考にすることが、
愛着障害のお子さんは「立っていられない」ということです。

      

このケースのお子さんは、「抗重力筋」が著しく弱いというデータがあります。
「抗重力筋」とは、運動などで体を動かしているときに働く筋肉ではなく、
無意識に姿勢を保持しているときに働いている筋肉です。
重力と均等に釣り合うために必要な筋肉、というと分かりやすいでしょうか。

      

抗重力筋を大別すると、5箇所に分けられます。
1.背中・・・脊柱起立筋、広背筋
2.おなか・・・腹直筋、腸腰筋
3.お尻・・・大臀筋
4.太もも・・・大腿四頭筋
5.ふくらはぎ・・・下腿三頭筋

      

筋力が著しく弱い、または疲れを感じやすいので、
普通に立っていることすら難しいのです。
また、正座をしても背中を伸ばすことが出来ません。

      

ちなみに空手では、上記の筋肉を鍛える稽古が多いです。
愛着障害だと思われていたお子さんも、
数年間稽古に通ううちに、抗重力筋が鍛えられたせいなのか、
愛着障害の症状が全く見られなくなったというケースも多々あります。

      

愛着障害と思われる子ほど、実は親の見切りが早いです。
「空手は無理そうなのでスイミングに変えます」
「子供がピアノがしたいと言うので」
「サッカーの方が向いているかと思って」と理由を仰られます。
後に聞いてみると、
次の習い事は一か月で辞めたとか、
1回行っただけでもう行かなくなったという話が多々ありました。

      

私の道場では、「発達障害」(あえてこう表記します)の診断を受けていた子でも、
黒帯を取得できた事例がありますし、
全国大会で上位入賞した子もいます。

      
 ※新極真会の黒帯は空手界で最難関の位置ですし、
  新極真会のカラテドリームフェス国際大会・全国大会は、
  3000人超が参加する世界最大規模の選手権大会です。

      
最初はひどいもんでしたよ。
誰でも出来ることが何一つ出来ないのだから。
でも、親御さんも一生懸命愛情を注いでサポートしてくださり、
少しずつ力をつけて、
そのお子さんが持つ「感性」を活かせれるレベルになった時、
普通ではないところまで昇り詰めることが出来るようになりました。

      

誰に向かっていうわけではありませんが、
お子さんを愛しているならば、
「助ける・褒める・お手伝い」をして下さい。
道場で出席簿に名前の字を一文字も書けないなら、
おうちでひらがなを一緒に勉強する良い機会かと思います。
帯が締められないなら、お母さんも一緒に帯の締め方を覚えましょう。
稽古前にお声かけ頂ければ、帯締めの手順を動画で撮りますよ。
そして、
愛しているが故に、要となる部分では「厳しく接する」事も本当に大切であります。

      

甘やかしすぎて、
自分自身でモノを考えられない人間に育ててしまう事と、
逃げる事でピンチから脱する事を覚えさせてしまうのは、
本当に愛情不足の親のする事です。
残念な親、極々たまにですが現れます・・・

      

      

※写真と本文は何も関係ありません。
 ちなみに、今日の高松西道場の幼年・低学年クラスと、最後のゼネラルクラスの写真です。